ものづくりの標準化と人狼の進行論

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ものづくりと人狼

私は化学系出身にも関わらず今の仕事は今は機械設計なのだけれど、
設計になる前は化学プラントでの配管・反応機など検査をやる人だったり、自動車部品の立ち上げ品の検査をする人だったり、品質管理の人だったりした。

検査では出来上がったものが正しいかどうかを確認したり、老朽化したプラントがまだ使えるか確認したりした。
品質管理では基準を作ったり(狙いの品質と言う)、作業の標準化を行ったりしていた。

先日、友人の「正しいものが本当にあるのなら、話し合って決めればいいのに全然決めないってことは、正しいことなんてないんじゃないか」と言う嘆き。
それから、人狼で「陣形確定まで話をしない」と言う事。一見全然関係ないこの2つの出来事が繋がるところがあった。
専門ではない人向けに書いてあるので、正確さを欠く表現があるかもしれないが大筋で合っていればご容赦願いたい。

作業標準化と不適合品の扱い

いきなりだが、ものづくりの検査には「正しい姿」と言うものが存在している。
規格が50.0±2.0[mm]であるならば、52.1だったら全てNG品である。
ところが、このNG品は不適合品だから破棄されるのかと言うと、否である。
※「不良」ではなく「不適合品」と呼ぶことに注意してもらえると、頭に入りやすいかもしれない。

何故なら、モノづくりは100個作ったら100個全く同じものが出来るのではない。
元々ばらつきを見て、余裕を持って設計(デザイン)される。(穴にシャフトを入れた時にシャフトが太いと回しにくくなるのでやや細めに作っておく、というイメージ)よって、実際の規格と「不適合品が実際に使えるか」どうかの間には差があり、不適合品を使用する事を許可することを「特別採用」だとか、あるいは「設計変更」で、基準の方を変えてしまうとか、そう言う対応をする。

そして「ものづくりの規格」は、「狙いの品質」を達成するためにある。※この文言は歌で例えるならサビなので繰り返し出てくる。

ちなみに、不適合品が発生した場合はそれが軽微であれば現場視点だと「不適合品が出ても全部手続きして特別採用すればいいじゃないか」と思うわけだ。
一方で、間接部門(営業・品質管理・設計)からすると、お客さんに手間を取らせる為、その手続きや、ブランド力の低下など様々な問題がある。
不適合品の多さは、見えないコストとなるのだ。
何より、エンドユーザーに迷惑が掛からないのか、と言う点が大事だ。
(……あまり大きな声では言えないが、エンドユーザーの事が比重として小さくなる場合もあった)

これらは出来る限り高いレベルで両立されるべきで、社内・社外関係部署の間で、そこに折衝が発生する。
折衝の結果「設計変更」ではなく「特別採用」となった不適合品に対しては、原因を潰した対策を新しい標準として、これから不適合品を出さないようにしましょうね、という対応が取られる。

自動車の場合は完成車メーカーの下に各種ASSY(部品を組み合わせたもの)のメーカーがおり、さらにそのメーカーに(設計意図を満たすだけの)部品を供給するメーカーがあって、さらに……と、関係者が膨大なので、それをある程度簡略化するために規格がある。
不適合品の発生が下請け構造の下流で起きれば起きるほど、当然折衝のコストが増大する為、意見も通りにくく失敗(不適合品)が許されにくい。そう言う傾向だ。

これは余談だが、だからこそ就職のセミナーなどでは上流を目指しましょうと言われるし、「完成車メーカーと直接取引!」と言うのが、求人側の売りになることはよくある。

人狼における「作業標準化」

人狼における狙いの品質とは何か

人狼はゲームである。
よって当然「ルールの範囲で勝利を目指す」という大目標がある。
そして、2陣営で戦う人狼の場合、村側は「狼を全員追放する」というのがシステム上の扱いだ。

「自分が狼が誰か探す」というのは、実は手段でしかないのだがほとんどのゲームにおいて人狼も村人も探さずに人狼が勝手に死ぬという事はない。
よって、実質的には「自分が狼が誰か探す」も目標であると言って8割方は差し支えないだろう。よって、「狼を探すことが出来る」進行(「進行」とは誰を、どのような順番で追放するか決めること)というのが「正しい」進行だと言える。

標準化された手順としてのローラー

人狼には「霊能者ローラー」という作戦がある。
霊能者を名乗る人が2人出た場合に、順番にその霊能者を処刑する作戦だ。
霊能者という役職は、追放した人が狼(黒)か人間(白)か分かる能力を持っているが、追放された人は発言権を持たないため生存者の黒白が分かる占い師と言う役職に比べ価値が低い(とされていることが多い)。

言うなれば「霊能者ローラー」とは「2回の追放を使って、村側能力者と人狼陣営を1:1で確定交換する」という作戦であり、追加するなら「その分のリソースを他に使う」という作戦でもある。

当然、村側は霊能者と人狼陣営1が釣り合うかどうか価値観を持って選択するし、
他からの推理が返ってくる事を期待しなければならない。
ちなみに、その他諸々検討要素はあるが、長くなる上に今回の話題からは外れるので私のサイトのカテゴリ「戦術論」「村側能力者」を参照して欲しい。

人狼に標準作業は作れるか

さて、「検査での正しい姿」は、「狙いの品質」を達成するためにある。と上で述べた。
これを人狼に当てはめて「進行の正しい姿」は、「狼を探すためにある」と言い換えてしまおう。

そうした時に、最も問題になるのは「狼の探し方には得意不得意がある」という点だ。
結論から言えば、私は事前に人となりがわからないタイプの人狼に標準作業は作れない(だからこうやって、ノウハウではなくひたすら理屈と根拠を書いている)という立場だ。

逆に言うと、「個人の得意を考慮した最適解」というのはプレイヤーそれぞれが持てるし、
それぞれのすり合わせが「人狼探しチーム」を強くすると考えている。

人狼における「ばらつき」

役職「人狼」は、プレイすると分かるが村人たちの疑い先によって瞬時に状況が変化し、その度に素早く対応をしていかなければならない。

村人にとっての「狼探しの標準作業」というものは、人狼にとっても「狼探しの標準作業」であるので、そこに読み合いは発生しない。
このことに作戦選択の際は留意するべきだ。

「ものづくりの狙いの品質」は量産の場合不変だが、「狼を探す狙いの品質」はメンバーによって変わる。
狼を探す品質が許容される範囲を超えていれば修正する。
PDCAを回し、標準作業を変える。
これが人狼における「ばらつき」への対応と言える。

具体例を挙げると、
「占真狂で狼探しをした。しかし真狂の時の想定狼が村人であった為、前提の誤りを認め占真狼前提に切り替える」
「特定人物が狼だと言う前提で仲間狼を探していた。しかし襲撃で違うことがわかった為考え直す」
などである。
しかし、追放が成功だったかどうか判断するためには、システム的には4つしかない。

  1. 占い師の能力
  2. 霊能者の能力
  3. 容疑者の襲撃による白確定
  4. ゲーム継続による最低生存残狼数

これらのうち、どれを使って推理するか?と言う話し合い・読み合いも、人狼の面白さだ。
当たり前だが、推理の更新が行われず序盤の印象のまま突き進むことになると弱い。はっきり言うとそんなものはただのカンである。人狼における狼探しは失敗を活かして最終的に勝つ事だと言っても言い過ぎではない。

標準を作る人、待つ人

ちょっと尖った意見になるかも知れないが、上記の話から、個人的には「陣形確定まで喋るのを待たない人」と言うのは、自分で標準を使っていく人だと思う。
逆に確定まで黙る人は、標準に沿って話をしていきたい人だろう。前者ばかりだとそもそもの進め方がまとまらなくてチームが成り立たないが、後者ばかりでも成り立たない。そう言う微妙なバランスが村の中には存在している。

自分がやりたい動きと合致しているならば構わないが、そぐわないのならば今からでも変えていくべきだろう。
この簡単な場合分けこそが、自分なりの「正しい進行」に対する考えと言った所だ。

まとめ

  1. 「正しい進行」は個人の得手不得手によって異なる
  2. 「標準作業」と言うべき推理のPDCAは4つの要素で回る為、それを有効活用し最終的な村勝利を目指す。
  3. (個人的には)舵を取る人と従う人はチームにバランスよく存在するべき。どっちも必要。
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